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 目を覚ますとそこは見たことがない部屋だった。  冷たい目で、自分を覗き込んでいる男を見て、少女は悲鳴をあげた。 「い、いやっ! なぜ? ここ、どこ?」  ベッドから起き上がり逃げようとしたが、起き上がった途端に頭がグラグラしてベッドに倒れ込んだ。 「薬が聞いているからな。まだ動かない方がいい」  冷たい男の声。 「な、なぜ? なぜ私を?」  少女の問いに男はうっすらと微笑を浮かべた。 「恋は罪だ」  男の言っていることが分からず、少女は息を飲んだ。 「愛は真。君は僕に恋をするのではなく、愛するんだよ」  ニコリともせず、凍りついたような冷たい表情。  少女を見ているようで見ていない。 「生涯、僕だけを愛する。他の何にも見ずに。これこそ、無償の愛。僕に対する真の愛だ」 「だ、だから閉じ込めたの?」 「君のことは秘密にするよ、絶対に。僕のことが好きと言ったのは君の方からなのに、僕から逃げるから。ここなら僕から逃げられない。1日中僕を想って過ごせばいい」 「あなたは、狂ってるわ! 私を出して!」  男は少女の首に手をかけた。 「僕から逃げると言うのか! 僕を愛しているのではなかったのか? おまえも嘘つき女なのか!」  突然激昂した男の手から逃れようと、少女は藻掻いた。  爪が男の手の甲を傷つけた。  男は少女の頬を打った。  少女の体が後ろに飛んでベッドに倒れ込んだ。  男は少女の体を抱きかかえる。 「大丈夫か? 君が僕を怒らせるから。静かに僕の言う事だけをきいていたら僕は君に優しくする」  少女は男の手から逃れようと、腕をがむしゃらに振り回した。
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