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6
「君も、何度言っても分からないのか。ならば永遠に眠り続けるがいい。ここで、僕を想って」
そう言うと男はポケットから注射器を出した。
「い、いやっ! 助けて! 助けて!」
悲鳴をあげながら、逃げようとする少女の肩に向けて男は注射器を振り上げた。
恐怖のあまり、少女が失神した。
少女の肩に注射器が刺さり、崩折れる…………と思ったのは男の幻想だった。
男は腕をつかまれ、ねじ伏せられた。
「そこまでですよ、生物学の友呂岐先生、いや、友呂岐 拓実」
友呂岐が振り返ると、仮面をつけた長身の男が自分を押さえているのが見えた。
少女は、同じく仮面をつけた別の長身の男が友呂岐から保護するように抱きかかえている。
「誰だ! 邪魔を、するな」
怒気を孕んだ声にも臆する様子もなく、仮面をつけた男が答えた。
「白薔薇騎士団、とでも名乗っておきましょうか。大事な生徒たちを守る義務が私にはあるので。ここ最近の事件を調べ直したんですよ。自殺をした生徒たちは皆、あなたへの好意を持っていたことが判明したのでね、こちらも注意をしていたところでした」
「うるさいっ、黙れ。人の恋愛に口を出すな。そうだ、これは純愛だ。咎められることなど何一つない」
「純愛ねぇ……。純愛とは自分の思いどおりにするために相手へ薬品を使うことなんですかね? いずれにしてもあなたのしたことは犯罪だ。社会的制裁を受けるがいい」
そう言うと仮面の男は棘のついた数本の白バラで友呂岐を打った。
薔薇の棘で友呂岐の頬に傷がつき、血がツッと流れた。
「僕の! 僕の顔に傷をつけたな! よくも、よくも!」
「傷ぐらい、何だと言うんです? あなたの勝手な欲望で傷つけられ、殺された生徒たちは、もう何も言えないんですよ」
仮面の男を睨みつけながら、友呂岐が答えた。
「それなら、礼を言って貰いたいくらいだ。彼女たちは汚れを知らずに、愛だけを知って旅立てたのだ。真の愛を」
自分の言葉に恍惚の表情を浮かべた友呂岐に、仮面の男たちは、何を言っても無駄だと諦めた。
手早く持ってきた蔓薔薇の蔓を使い、友呂岐を縛りあげる。
食込む茨の棘の痛みに友呂岐は苦痛の表情を浮かべた。
「手持ちの縄がこれしかないから仕方ない。警察が来るまで、窓から吊るすか?」
感情のない仮面の男の声に、友呂岐が恐怖の表情を浮かべる。
友呂岐を縛りつけた仮面の男は、少女を抱きかかえたもう一人の仮面の男から、少女を抱きとり、大事そうに抱え直す。
そして、命じた。
「おまえに任せる。容赦はするな」
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