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「えぇーっ、ぼくまだ遊びたいーっ!」
「でももう十二時だし、帰ってご飯食べないと」
「イヤーっ、おなかなんて空いてないもんっ! まだジンくんと遊ぶのっ!」
うーん。どうしようかな。
困って嘆息し、鳴海くんに目配せする。
「あ。俺もまだ大丈夫ですよ? 夕方に帰ればいいし」
「……うん」
普段だったらちゃんと言い聞かせないと、と思うのだが。きっと私自身が、鳴海くんと遊んでいて欲しいと思うせいだろう。私は「じゃあ」と言って颯太に提案した。
「ママ、これから一度お家に帰って、三人分のお弁当作って来るから。颯ちゃんはこのままジンくんと遊んでてくれる?」
「えっ! いいの??」
「うん。一時間ぐらいかかっちゃうかもしれないけど、それまでジンくんと一緒に待てる?」
「うんっ!」
颯太は嬉しそうに頷き、鳴海くんに向かって「やったね」と顔を綻ばせていた。
「ごめんね、鳴海くん。出来るだけ早く戻るから、颯太のこと、お願いしてもいい?」
「うん、全然それは。颯太くんと遊んで待ってるんで、慌てずにゆっくりで大丈夫ですよ?」
「ありがとう」
私は小走りで踵を返し、お弁当を作るために一度自宅に戻った。ちょうどご飯が炊き上がっていて、母がお味噌汁とともに茶碗によそっていた。
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