1.偶然か必然か

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 誰もかれもが個性的な格好をしていて、おしゃれ上達者もいればブランド品でかためた子もいる。それぞれにオーラやエネルギッシュさを兼ねそなえていた。  ほとんどの子が髪を茶色に染めていて、中にはピンクや緑にしている子もいた。なんというか、奇抜な子が多い。  学生たちは、丸めて輪ゴムでとめた模造紙や、という名称の仮布を買っていった。  まだ販売の全般を祥子さんに任せる形になってしまうが、これからおいおい覚えていかなければいけない。  学生たちのレジは全て手打ちで、バーコードを通さない。おつり計算も暗算で、瞬時に計算ができないと時間内にさばききれないらしい。ここでいう時間内というのは、彼らの休み時間をさしている。  とにかく、よく売れる商品の値段は暗記が必須だ。私は店に並んだ商品と値段を順にメモしていた。 「オッケー、厚手二枚ね。俺の模造紙も頼んだ」 「おう、今日二枚でいいよな?」 「のハズ、えっと、トワール、トワール」  ふたり組の男の子が来店し、若干、慌てた。それまでトワールの棚の前を陣取っていたので、私はメモから顔をあげて脇によけた。 「あれ?」  仮布を手にした学生さんと不意に目が合った。白っぽい金髪の彼を見て、うっかり口が開いた。
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