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「沙耶さん? 何でここにいるの?」
「へっ!?」
今朝も会った鳴海くんに違いないのだが。
何ではこっちのセリフ! 何で名前呼び??
「……えと。今日から、ここで働くことになって」
「え! そうなんですか!」
目を丸くした彼の瞳には、やはりグレーのカラーコンタクトが入っている。
一旦レジの引いた祥子さんが、私たちを見て「あれ」と声をあげた。
「仁くん、沙耶ちゃんと知り合い?」
「知り合いというか。まぁ……」
「へぇ~、新入りのお姉さん、沙耶ちゃんっていうんだ?」
鳴海くんの友達らしき男子が、二枚で丸めた模造紙を二本持って近づいてくる。
「なんだよ、仁。知り合いなら紹介しろよー?」
「なにばか言ってんだ」
鳴海くんがムスッと顔をしかめ、狭い通路をレジへと進む。すると、なにかに足がつまづいたのか、派手にすっころんだ。
「いってぇ……っ」
「だ、大丈夫?」
慌てて駆け寄ると鳴海くんは恥ずかしそうに俯いた。
「あはは、仁ってば相変わらずドジだなー」
「うるさい」
彼はなにごともなかったかのように立ち上がり、友達につづいて商品をレジカウンターの上に置いた。それぞれが支払いを済ませて、階段を駆け上がっていく。
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