2.私がシングルマザーになったのは

3/9
136人が本棚に入れています
本棚に追加
/368ページ
 それから一週間。本当に子供を堕ろすかどうか、延々と考え、思い悩んだ。経済状況など、現実的な問題を考えたら堕ろした方が良いのは分かり切っていた。 「沙耶の中で生まれた命だから。沙耶が納得いくまで考えて、答えを出しなさい」  母は堕ろせとは言わなかった。同じ女という性だから、妊娠した私の気持ちがきっと痛いほどに分かるのだろう。  結局、私は二者択一を迫られ、産むことを決意した。  この先が大変だからという個人的な都合で、生まれた命を無碍に摘み取ることなんてできなかった。  私の決断に父は渋い顔をしていたが、母は穏やかな笑みを浮かべて言ってくれた。 「沙耶に後悔が無いなら、お母さんはそれで良いと思うよ? お父さんとお母さんも、出来るだけのことはするから」 「……ありがとう」 「でもね、沙耶。母親になるって大変なことよ? ましてやあなたはシングルマザーになる訳だし、生半可な気持ちじゃ務まらない。  子供が物心つく頃には、父親がいない理由だって話さなければいけない。  沙耶がまた次の恋愛をしたいと思っても、子供がいる分、相手が受け入れられるだけの器かどうかを見極めなきゃいけない。時には引け目に感じることも有ると思う。そういう問題が有るってことだけは、ちゃんと覚えておいて?」
/368ページ

最初のコメントを投稿しよう!