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はい、と携帯を渡され、私は待ち受けの颯太を幸せな気持ちで見つめた。
三畳しかない休憩室にはスチール棚やロッカーの他に、模造紙の束が乗った折りたたみ式の机がでんと置かれている。二つの丸椅子を並べて座るのがやっとの空間だ。
祥子さんが給湯室で淹れてくれた緑茶に口を付け、私は自分のこれまでのことを話していた。
「沙耶ちゃん、まだ若いのに大変だったんだね」
同情、憐れみ、そんな言葉では形容できない優しい言葉を掛けられた。
「そう、ですね。でも困難なのはきっとこれからです。颯太が保育園で色々と知識を吸収して帰って来るので……何でうちにはパパがいないの? って。この間、ついに聞かれちゃいました」
「そうなんだ。沙耶ちゃん、何て答えたの?」
それが、と一度言葉を切り、目を伏せて曖昧に笑った。
「パパは颯太が生まれる前にお星様になったんだよって」
「……なるほど。無難な答えだね」
「はい。嘘をつくのは嫌だけど。本当のことを話すのは、もっと嫌だから」
「そっか。そうだよね」
スチール棚に乗せた置き時計を見やり、祥子さんが飲み終えたマグカップをその隣りに置いた。
「そろそろ三時だね。店開けようか」
「はい」
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