139人が本棚に入れています
本棚に追加
/368ページ
購買部は一回一回、開けては閉めるを繰り返していて、開けっ放しの体制を取っていなかった。
理由としては購買部に入り浸り、サボる学生がいるといけないからだ。
店は学生が登校する時間帯、休み時間や昼休み、そして放課後に開けていて、それ以外はシャッターを下ろしている。閉めている間は、私たちも休憩したり、売れた画材や糸などの商品を調達するため、本店ないしは西店に出掛けている。
チャイムが鳴った。僅か十分の休み時間が終わり、再びシャッターを下ろしていた。
「ところでさ、沙耶ちゃんはまた恋愛したいとは思わないの?」
「うーん、どうでしょう?」
自動シャッターを見つめながら、小さく伸びをした。
「颯太のために、父親が必要かなって思う気持ちはありますけど。わざわざ自分の為に恋愛する気にはなれなくて」
そこで目が合った祥子さんに苦笑いを向ける。
「ほら、前の人が余りにも酷かったし」
「……そっか」
シャッターが閉まり切り、休憩場所に引っ込もうとすると、「でも勿体ないなぁ」と祥子さんが呟いた。
「沙耶ちゃん小柄だし。まだ若くて可愛いから、いくらでも恋愛出来そうなのに」
「はは、可愛くないですよ」
最初のコメントを投稿しよう!