2.私がシングルマザーになったのは

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 いつの間にいたのか、階段から降りて来た鳴海くんと出くわした。今日は赤いフレームの眼鏡をかけている。 「次は四時半に開けるから、そのときにおいでね?」 「えぇ、そこを何とか」 「でも。もうシャッター閉めちゃったし」 「模造紙一枚でいいんで」  そう言って鳴海くんは白いケースの中から丸めた模造紙を一本取り出した。 「仕方ないな。じゃあ、二十円ね?」 「あざーっす!」  祥子さんの手に小銭を置いた鳴海くんと目が合った。 「沙耶さん、バイバイ」 「あ……うん」  すれ違いざま、フワッと香水のような匂いがして思わず振り返る。  ん? あれ?? 「ちょ、ちょっと鳴海くんっ」 「えっ?」  階段を上がろうとする彼の背中に慌てて声を掛けた。後ろで祥子さんが首を傾げているかもしれない。けれど私は鳴海くんに近付き、首元のソレをスッと引っ張り出した。  やっぱり。 「えぇっ、な、なに??」 「……鳴海くん、服のタグ付いたまま着てるよ?」 「ま、マジでっ!? やべっ!」  途端に鳴海くんの顔が耳まで真っ赤になり、可愛くて笑ってしまう。 「ふふっ。朝からずっと気付かずに着てたんだね? 待ってて。今ハサミ持ってくるから」  少し背伸びをして、ちょきんと糸を切った。
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