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鳴海くんのこの香り。何の香水だろう。
はい、とタグを渡すと鳴海くんはまだ赤面していた。
「じゃあね。授業頑張って?」
「……う、うん」
クルリと踵を返して今度こそは階段を駆け上がって行く。
「仁くんって意外とドジなところあるよね?」
休憩場所に戻ると祥子さんが笑って言った。ですね、と相槌を打つ。
「さっきのことだけどさ、ああいう子も多いから、その時その時で臨機応変にやると良いよ?」
「え?」
何を、と一瞬思うのだが。「販売」と祥子さんに返された。
「ああ、はい」
通常、購買を閉めてしまったら商品は売らないというのがここの決まりだ。
決まりを守らずにほいほい売っていたら、授業を抜け出して学生が買いに来る。そうすると、先生方からクレームが入るのだ。
てか、何の香水だったのかな。
確か、初めてエレベーターで会ったときはつけていなかったはずだ。
良い匂いだったなぁと思いながら、売れた商品を調達するために、私は学校を出て“西店”と呼ばれる場所に向かった。
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