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3.偶然の帰り道
購買部で働き始めて二週間が過ぎた。
早く仕事を覚えなきゃと前向きに頑張っていると、商品の値段も自然と頭に入り、レジも使いこなせるようになった。
九時に始まり、十八時半で退勤となるので、労働時間はやや長めだが、慣れると楽な仕事だと感じるようになった。
あと三十分、早く上がれると助かるんだけど。
最終の販売時間を終え、休憩室で私服に着替えてから「お疲れ様でした」と祥子さんに挨拶をする。
階段に足を掛けると、事務局の男性職員、津島さんに声を掛けられた。
「水嶋ちゃん今帰り?」
「はい。お疲れ様です」
津島さんはスラッと背が高く、スーツの似合うイケメンさんだ。サラサラの黒髪をいつも感じ良く整えていて清潔感もある。
推定年齢は、祥子さんと同じぐらいのアラサーだろう。
お疲れ、と挨拶を軽く受け流し、津島さんが二の句をついだ。
「今度さ。先生方も交えて飲みに行こうって話があるんだけど。水嶋ちゃんもどう? 屋島さんと一緒に」
「え……」
どう、と言われても。
瞬時に思うのは颯太のことだ。飲み会なんてとても無理。ぎこちなく笑みを固めた。
「あ。彼氏にうるさく言われちゃうかな?」
「いえ。そういうわけじゃ無いんですけど」
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