其々の決着

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 埃が積もり、昼間でも薄暗い廃屋のような倉庫。ここで、私は奏念と戦った。  そして、今、奏念の相棒の皆藤と戦おうとしている。 「奏念はここで死んだのですね。ある意味、我々にとってお似合い死に場所なのかもしれませんね」 「そうですか。私にはお似合いではないので困りましたね」 「お互い、人を殺めたことがある身。死に場所を選べる立場ではないでしょう」  私は薄っすらと笑みを浮かべる。 「始めましょうか」  皆藤は短剣を持ち、私に先端を向ける。  私は警棒を持ち、斜め下に振り、重苦しくもシャープな金属音を響かせた。  皆藤は右側に、私は左側に円を描くかのように動き始める。  皆藤はニヤリと笑い、短剣で突いてきた。  左に捻るように身体を動かしてかわし、警棒を水平に振る。  私のスーツとシャツが裂け、胸の辺りから血が流れだす。同時に皆藤にも同じような事が起こる。  相打ちか。  こいつもかなり強いね。  皆藤は再び短剣の先端を向ける。  私も警棒を皆藤に翳す。  皆藤の鋭い突き。身体を左に傾けてよける。左の蹴りが飛んでくる。左足で床を蹴って、下がってかわし、警棒を降り下ろす。  下がってかわす皆藤。  下から警棒を振り上げる。下がる皆藤。左の前蹴りを打つも、バックステップで避けられる。  お互いの空間が出来る。  一気に距離を詰めてくる皆藤。  警棒を斜め上から振り下ろす。  皆藤は一気に懐に入り込み、左手で警棒を振る右腕の動きをブロックすると同時に、短剣で突いてきた。  身体を左側に回転させてかわす。  右の蹴りが打ち込まれる。  左肘でブロックして警棒で突く。  上体を下げて短剣で突いてくる。  バックステップでかわす。  短剣を水平に振り、私の反撃を止める。  距離が空き、お互い、右、左側へと回り始める。  瞬時に距離を詰め、警棒で突く。  身体を捻るように動かして、短剣で警棒を右側に弾く。  左の蹴りがボディーに打ち込まれる。  堪えて右腕で左の蹴り脚を掴み、左の前蹴りをボディーに突き刺す。  尻もちをつく皆藤。  直ぐに立ち上がると同時に、短剣を前に伸ばす。  追撃は止められてしまう。  右側にスライドしていくように動く皆藤。  右側に平行線を描くかのように動いていく。  短剣を水平に振ってくる。  上体を下げ、右膝を床につけてかわす。  同時に斜め下から警棒を振り上げる。  短剣を振り下ろしてきて、警棒の攻撃を止められた。  左脚で蹴り上げられる。  後ろに弾け飛び、倒れ込む。  直ぐに立ち上がり、警棒を前に突き出し、追撃を止める。  お互い、円を描くように動き出す。  お互いの動きが止まる。  刹那!  皆藤の短剣の突き!  右手を狙って警棒を振り下ろす。警棒が空を切る。  皆藤の不敵な笑み。  皆藤は左手にナイフを持ち瞬時に突き刺してくる。  咄嗟に身体を左側に捻る。  脇腹を冷たくも鋭い感触が走り抜ける。  同時に両腕で皆藤の左腕を絡め取って引き込み、右足で皆藤の左足を払い、脇腹で左肘を抑えて、正面から倒れ込む皆藤の左肘に体重をかける。  乾いた木が折れたような音が響く。  皆藤の手からナイフが落ちる。  響き渡る皆藤の呻き声。 皆藤は強引に左腕を抜き、ゴロゴロと床を転がり、立ち上がる。  皆藤は左腕がダラリと下がった状態になりながらも、私を獣のような目つきで見据える。  皆藤の短剣が真っ直ぐに伸びてくる。  警棒を振り下ろし、短剣を叩き落す。  警棒を水平に振り抜き、ボディーに叩き込む。  皆藤は、ぐぐもった声を上げながら、右手で警棒を掴み、大声を張り上げて、身体を右側に動かす。  警棒を放り投げられてしまった。  皆藤の右の振り回すようなパンチが顔面を直撃する。  フラフラとさがり出してしまう。  左の前蹴りが飛んでくる。  身体を右側に捻ってかわし、身体を回転させて左肘を顔面に叩き込み、回転力を活かして右フックを叩き込む。  倒れ込む皆藤。  諦めると言う言葉を忘れ去った皆藤は立ち上がる。  皆藤は突進をしてきて右腕を私の身体に叩きつけてきた。  勢いに押し倒されてしまう。  皆藤の右の拳が顔面に襲い掛かってくる。  上体を左側に動かして何とかかわす。  両手で皆藤の頭を掴んで引き寄せると同時に、両脚を皆藤の両脚に絡みつけた。  両手をクロスさせて、皆藤のシャツの襟を掴み、絞り込むように引っ張り、絞め上げる。  絞め上げながら、何度も右斜め下に強引に引っ張る。  グギッ!  何かを支えている柱が耐え切れずに折れたかのような音が響く。  皆藤の首を折った。  ただ、身体の重さだけで私に覆いかぶさっている皆藤が目の前にいる。  皆藤を払いのけて立ち上がる。  放り投げられた警棒を拾い、短くして懐にしまい込む。 「悪いけど約束は守らせてもらうわよ」  私は皆藤のスーツの内ポケットに入っていた、私名義の通帳、キャッシュカードと印鑑を手にする。  有効に使わせてもらうから。  最も、これからあの藪医者の世話になるから、アイツへの支払いに使い切ってしまいそうだけどね。  今回も、深手を負った。脇腹の傷は結構深い。アイツの治療を受けるしかないみたいだ。  タオルで抑えているけど、血が止まりそうにないからね。  私はふら付きながらも、しっかりと前を見据えて歩き出す。  私なりの正義が行きつく先に、何があるのかは分からないけど……。 FIN    
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