2/2
前へ
/26ページ
次へ
 奏念は手槍を構え、ジリジリと距離を詰めてくる。  私は警棒を威嚇するように翳す。  奏念の手槍の突き。  バックステップでかわし、警棒の突きで、奏念の連続攻撃を防ぐ。  距離を取る奏念。  少し斜め下から警棒を振る。  奏念は上体を反らせてかわし、すかさず手槍で突いてくる。  身体を斜めに傾けてかわし、右の蹴りを叩き込む。  同時に奏念の右の蹴りが私の身体を捕らえていた。  お互い、尻もちをついてしまったが、直ぐに立ち上がる。  相打ちか……。  強いお坊さんだね。  ニヤリと笑ってみせる。  奏念の表情が険しくなり、手槍の突きが飛んでくる。  上体を斜め後ろに反らしてかわす。  すかさず左フックが打ち込まれる。  上体だけを右に回してかわし、警棒を降り下ろす。  奏念は下がりながらも、前蹴りを放ち、私の追撃を止めた。  一旦、距離が出来るも、奏念は直ぐに距離を詰めてくる。  胸元を狙う手槍の突き。  下がってかわす。  突いた位置から水平に手槍を振られる。  これも下がってかわしたが、胸に傷を負わされてしまった。  下の白いシャツが赤く滲みだし、チリチリとした痛みに襲われる。  奏念は表情一つ変えずに、手槍の突きを放ってくる。  右サイドに回り込んでかわし、警棒を降り下ろす。  左サイドに回り込まれてかわされる。  間髪入れずに手槍の突き。  左手で手槍を弾く。  左の前蹴りをボディーに叩き込まれる。  吹き飛ばされ、尻もちをついてしまう。  直ぐに立ち上がり、警棒を真っ直ぐに伸ばし、追撃を防ぐ。  右回りに動き出す。  奏念はゆっくりと左回りで動く。  前に翳していた警棒を下に下げる。  距離を詰める奏念。  斜め下から蹴棒を振り上げる。  奏念は上体を反らしてかわす。すかさず左の蹴りをボディーに叩き込む。  怯まずに手槍の突きが放たれる。  上体を右側に捻ってかわす。  手槍を水平に振られる。  右膝を地につけてよける。  左の蹴りが首筋に叩き込まれ、倒れ込むも、ニヤリと笑って立ち上がる。  殺傷が大好きな困ったお坊さんだ。  警棒を前に翳し、チラチラと揺らしながら、左回りに動き出す。  奏念は動かずに私の動きに合わせて、身体を回していく感じになる。  奏念は不意に手槍を横に伸ばす。  笑みを浮かべ、動きを止め、警棒をチラチラと揺らすのを止める。  手槍を前に戻す奏念。  手槍の突き。警棒で右手を狙い振り下ろす。  手槍を引き戻す奏念。警棒が虚しく空を切る。奏念の左の蹴りが襲ってくる。  瞬時に警棒を右斜め上に振り上げる。  警棒が奏念の左膝の内側を容赦なく打ち抜く。  バランスを失い、倒れ込む奏念。  それでも奏念は手槍を前に翳す。警棒を右手に叩き込む。弾け飛ぶ手槍。  左の蹴りを奏念のテンプルに叩き込む。  バッタリと倒れ込む奏念。  それでも、奏念は執念で立ち上がる。  右脚に体重を乗せて左の拳を力任せに振ってきた。  上体を回してよけて、警棒を左膝の外側に打ち込む。  バランスを崩し、尻もちをつく奏念。  警棒を頭部に振り落とす。  奏念は両腕をクロスして警棒の一撃を止め、身体を右側に大きく捻り、警棒を弾き飛ばした。  上体を起こした奏念の顔面に右の蹴りを叩き込む。  顔面で蹴りを受け止め、私の右脚を両手で掴み、右脚だけで全力で押してきた。  倒されてしまう。  奏念は覆いかぶさってきて、左のパンチを叩き落してくる。  上体を右側に捻り、両手で奏念を左側に押しのけ、右の蹴りを脇腹に叩き込む。  飛ばされて、転がり、倒れ込む奏念。  私が立ち上がると同時に奏念も右脚だけで立ち上がる。  ヨタヨタとした動きで距離を詰めてくる。  左斜め前に埃を被ったスチール製の机が視界に入った。  私はダッシュをして飛び上がり、左脚で机を蹴り、右の足で奏念の側頭部を蹴り抜いた。  バッタリと正面から倒れ込む奏念。  私は飛ばされて転がっていた警棒を拾い上げ、必死に上体を起こした奏念の頭部に警棒を叩き込んだ。  頭蓋骨を粉砕し内部の脳を破壊した感触を、右手がしっかりと感じ取る。  私は警棒を元の長さに戻して、懐にしまい込む。  奏念さん。  強かったよ。けど、動きが正直すぎたね。  私はそう言い残し、この倉庫を後にした。
/26ページ

最初のコメントを投稿しよう!

23人が本棚に入れています
本棚に追加