藪医者

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 目が覚める。  途中で意識を失っていたみたいだ。胸の辺りがズキズキと痛む。  麻酔無しでやりやがって!  藪医者め!  何とか上体を起こし、辺りを見回す。地下室と言う事もあり、太陽の光が差し込まないから時間の見当がつかない。  最も、あの藪医者には時間と言う概念は必要なしか。患者は訳アリばかりだからね。計画通りの治療なんてあり得ない。  それに、医師免許が剥奪されているのに、医療行為を続けている時点でアウトだ。  しかも、請求してくる治療費はとんでもない金額。  そんな事を思っていたら、延末が部屋に入ってきた。 「食べるでしょう」  延末はベッドの脇にある小さなテーブルの上に、何処かのバーガーショップで買ってきた紙袋を置く。  延末は椅子に座り、バーガーを頬張る。 「沖田ちゃん。かなり鋭利な刃物でやられたね。警察の病院でやってもらえば、無料でしょう」 「そこに行けないから、ここに来るの。察してよ」 「何時も訳アリだね~。まっ。うちに来るのはそんな輩ばかりだから、構わないけどね~」  能天気なアウトロー医者だ。 「ところで、支払いは何時になるのかな~。かなり溜まってるよ~」 「出世払いと言う事で。安月給だからね」 「一生、払ってもらえないはね」  延末と笑いながら、能天気な会話を続ける中、情報屋として得た収入が、まだ残っていた事に気付く。  私は延末にスーツの内ポケットに入っている封筒を取って欲しいとお願いをする。  延末はスーツの内ポケットに入っていた封筒を、私に手渡す。 「取り敢えず、今日の所はこれで勘弁してくれる」  封筒ごと延末に手渡す。 「全然足りないけど、今日の所はこれで勘弁してあげる」  つまらないやり取りをしながら、バーガーを食べる。  少しの間、ここに厄介になりそうだ。糸が抜けるまでは、静かにしていなければならないからね。
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