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結局、一週間くらい世話になってしまった。
「沖田ちゃん。これ以上、身体に傷を増やすのはどうかと思うよ。少しは自分の身体、大切にしなよ」
私は軽く右手を振り、延末の元を後にする。
確かに私の身体には、一生残る傷跡が幾つも刻まれている。これからも増え続ける一方だろう。
私なりの正義を貫く限り。
繁華街を歩きながら、延末との出会いを想い出す。
病院が武装集団のような連中に占拠された事件があった。その時、彼女はその集団に捕らえられた人質の一人だった。
私は単独で、病院に潜入し、一人ひとりと連中を片付けていく。
最後の一人が、彼女を後ろから抑えて、銃をこめかみに当て、人質にとったが、私は容赦なく犯人を射殺した。
それが、彼女との最初の出会いだった。
怯えきって泣いていた彼女に、救急車が到着するまで寄り添ってあげた。
今思うと、損したと言う印象しか否めないが……。
武装集団は五人。全員死亡。
動機は分からずじまいになるかと思われたが、病院側の医療ミスの隠蔽、トップによるお金の横領等、色々な問題が発生した。
彼女も医療ミスの隠蔽に関わったメンバーの一人に上げられ、新聞にも載ってしまい、渦中の人となり、その病院を去った。
それから、暫く経って、彼女と思わぬ再会をすることになる。
厳しい戦いを強いられ、身体にかなりのダメージを負った。
警察関係の病院に行くことも出来ず、街中の裏通りをよろめきながら歩いていたら、彼女に偶然出くわした。
彼女は酷い傷を負った私に驚きはしたが、その後は冷静だった。
彼女の肩を借りて何とか歩き、例の地下室に連れて行かれ、そこで治療をしてもらい、そこから彼女とのお付き合いが始まったと言う訳だ。
彼女との出会いを思い起こしながら、私はタクシーを捕まえる。
改めて考えると、このまま『蠍』と戦い続けるのは厳しい。
見限と交渉するしかないだろう。
私は、例の公安職員が利用している、うす暗いバーを目指した。
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