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龍昇会の事務所に到着する。一見すると普通の事業所のような感じに見える。
中に入ると怖いお兄さん達が出迎えてくれるのかな。
思った通りになった。思わず笑みが毀れてしまう。
「甚(じん)、その女はなんだ」
奥の方に座っている男が、私を案内してくれた若い男に大声で話しかけてきた。
「俺達の事を嗅ぎまわっていた怪しい女です。ただ、俺達に耳寄りな情報があるとほざいていたので、連れてきました」
「甚くんって言うんだ。かっこいいね」
甚は煙たそうに私から離れる。
「女。その情報とやらを聞かせてもらおうか」
「レイラと呼んでもらえますか。それと私は情報屋ですよ。そう言えば分かっていただけますよね」
「テメー!どこまでふざけてんだ!」
甚が怒鳴り声を上げて飛び掛かろうとしたが、組員の人達が抑え込んだ。
「甚。大人しくしてろ」
男は自分の机に戻り、引き出しを開け、封筒にお金を入れ、私に近づいてくる。
「情報内容によっては、これをお渡ししますよ。レイラさん」
組のお金をある程度なら自由に使えるようだ。幹部クラスで間違いない。ここは取り入るチャンスかもしれない。
「分かりました。では、今回は特別に無料で提供しますよ。その代わり、暫くこちらにおいてもらえませんかね。必ずお役に立ってみせますので」
交渉を持ちかけてみる。
「それでよろしいのですか。私としては一向にかまいませんよ」
「では。そう言うことで」
私は麻薬班から掴んだ情報を伝えた。近いうち龍昇会で取引があるが、情報が警察に漏れているので、麻薬の取引を実行したら危ない事を。
「助かりました。かなり有益な情報でした。レイラさんこれからもよろしくお願いしますよ。私は笹呉(ささくれ)と申します」
私は幹部らしき男と握手を交わした。
これで、龍昇会に上手く取り入る手はずは整った。
これからは、手に入れた情報をどう上手く活用していくかだ。
「では。また耳寄りな情報を持ってきますので、楽しみに待っていてくださいね。笹呉さん」
私は笑みを浮かべ、そう言い残し、龍昇会の事務所を後にした。
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