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私は、また繁華街へと戻る。
裏通りを抜けて、隣の繁華街へと入っていき、そこの裏通りを抜けていく。
更に、奥へと入っていき、ネオンがチカチカと光る中、さえない感じの通りへと歩いて行く。
その通りを奥へと進んで行き、人気とは無縁な通りへと入る。
男達の怒鳴り声が響きだす。
甚くん。かっこいいところ見せられるかな。
後をつけてきたのは分かっていたよ。悪いけどここは雲幻界のシマだから。私に夢中で気が付かなかったみたいね。
「レイラさん。こんな所でお会いできるとは思いませんでしたよ」
惚けたような感じで話しかけてきているが、この男は侮れない男だ。雲限界の幹部をやっている蓑傘 勝原(みのかさ かつはら)だ。
今回の件でしっかりと知り合いになっておいた男だ。
「みのちゃん。久しぶりだね。元気だった」
私は蓑傘の帽子を取り、見事に禿げ上がった頭をナデナデする。
「相変わらずですね。ところでレイラさんの後をつけていた若造については、丁寧に指導をしているところですので、お気になさらずに」
「優しくしてあげてよ。まだ、若いんだから」
「心得ておりますよ」
蓑傘は不敵な笑みを浮かべ、帽子をかぶる。
蓑傘と世間話をしていたら、前方から黒いスーツで身を固めたいかつい集団がやってきた。どう見ても一般の人達じゃない。
「素敵な男性陣がいらっしゃったけど、幹部の皆さんかしら」
蓑傘に聞いてみる。
「組長と幹部の方々ですね」
中央にいるのが組長。両脇を四人の男達が固めている。幹部の連中で間違いないだろう。
組長の右側にいる男が気になった。何もかもを見透かしてしまうかのようなやたらと鋭い目つき、顔立ちこそ端正だが、かなりの威圧感がある。体つきも鍛え込んでいて、無駄のないシャープな感じだ。動きにも隙が全く感じられない。
「蓑傘さん。組長の右側にいる人は誰かしら」
「幹部の見限 誡人(みかぎり かいと)さんです。二年前に幹部にのし上がったひとですね。気になりましたか。中々の良い男ですからね」
「違うわよ。かなりの切れ者にみえたの。私の見た感じ、あの人には気をつけた方がいいかも」
「そうですか。かなり義理堅い方ですが」
蓑傘らしい回答に思わず笑みが毀れる。
私は蓑傘に軽く手を振り、雲幻会のシマを後にした。
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