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暗殺者
警察の方の動きは相変わらず悪い。有益な情報が集まらないと言う所もあるが、動きそのものが停滞している感もある。
何か嫌な予感がするが、警察の方で何かを仕掛けると言ったものは全く感じ取れない。
龍昇会と雲幻会の方も動きはない。
対立こそしているが、今の所、どちらかが攻勢をかけると言った動きはない。
全ての動きそのものが、停滞している感じだ。
上からも特に指示が出ていない中、警察は本当に二つの組の抗争を止める意志があるのか、疑問を感じてしまう。
警察の動きが芳しくない以上、龍昇会の方にでも顔を出してみますかね。
私は一人、龍昇会の事務所へと向かう。
事務所に近づくにつれ、何時もとは違う空気が漂っているのを感じる。
何があったのだろう?
事務所を前にして、やたらと騒がしいものを感じ取る。
事務所の中へと入っていく。
中は騒然としていた。
「うちの若頭筆頭がやられた」
「雲幻会の奴らだ!間違いない!」
怒号が飛び交う。
「静かにしねえか!」
笹呉さんの一言で事務所内は静かになった。そんな状況の中、事務の峰島さんは全く動じずに、坦々とパソコンのキーボードを打っていたのが、妙に印象に残ってはいたけど。
「笹呉さん。何があったんですか?」
「部外者のレイラさんには関係ないことだと言いたいが、何が起こったかは知ってしまいましたよね」
笹呉さんは冷静ではあるが、強めな口調で語るように話しかけてくる。
「若頭筆頭の方が殺されてしまったと叫んでいましたよね」
「しっかりと聞いていましたか。流石、情報屋さんですね」
「かなり大声で皆さんが叫んでいましたので、しっかりと」
私はクールに笑みを浮かべながら話す。
「そうなってしまうと、暫く貴方にはここにいてもらうことになりますね。外で余計な事を喋られてはこまりますので」
「私を監禁しますか。得策とは言えませんね。私の仕事は情報集め。口止め料を含めて、お金さえ頂ければ、幾らでも有益な情報を集めてきますよ」
厭らしくにやけて回答をしてみせる。
笹呉さんは舌を鳴らし、私から距離を置く。
「殺された時の状況を教えて頂けます。参考意見程度ですが、少しでもお役に立てればと思いまして」
笹呉さんは最初こそ渋い表情だったが、若頭筆頭が殺されていた状況について話し出す。
若頭筆頭を発見したのは、若い組員。
部屋で一人でいる所を襲われたとのこと。部屋は散らかっていなくて綺麗な状態だった。
周りが血だらけと言う事もなく、出血が少なかったので、最初は寝ているのかと思ったが、近づいてみたら、出血が確認できたので、声を掛けながら抱き起そうとしたけど、亡くなっていたとのこと。
笹呉さんは説明が終わると、私に意見を求めてきた。
「参考程度ですが、部屋に入って寛ごうとした所を、急所に鋭利な刃物による一撃で仕留められていますね。即死だったために、出血も少なく、部屋も散らかっていない。相手はプロの中のプロ。超一流の殺し屋に狙われてしまったと言うことでしょうか」
「雲幻会の奴らが雇ったんだ!奴らと今から戦争だ!」
若い組員の一人が叫ぶ。
「黙らねえか!」
笹呉さんが一括する。
「レイラさん。この件に関する情報を警察より速く掴む事。それが出来たなら、それ相応の報酬をはらいますよ」
凄みを効かせた表情を浮かべる笹呉さん。
私は笑みを浮かべ、この件を受ける。
抗争は止めなければいけない。
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