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しまったと思った瞬間、佐野(さの)は地学部棟の方へと走って行ってしまう。 「あ、おい……」 追いかけようと思うが足が前に出ない。でも、これでいいのかも知れない。佐野(さの)の目が覚めればきっと、俺なんかよりずっといい恋人にも巡り逢えるだろう。 「そうだ。いいんだ」 納得する。しようと……する。でもなんだろう。泣かせてしまったことで罪悪感とは違う、悲しみのような感情が一気に溢れてくる。 …… しばらくその場で固まっていると、ポケットのスマホが振動する。(しょう)からだった。 『あ、(さとし)くん?どう?蝶見つかった?』 「いや……」 『今美和(みわ)と一緒だよな?』 「実はちょっと口喧嘩みたいなっちゃってな。さっき別れた」 『そっか。美和(みわ)に告白でもされた?』 一瞬考えて、息を吐く。 「知ってたのか」 『美和(みわ)の気持ちならずっと知ってたけど。だから2人きりになるきっかけがあればいいなって、瑠璃(るり)とずっと考えてたんだ』 先週、2人がやたらハイテンションだったことを思い出す。あれはそういう意味だったのか。
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