12

1/1
15人が本棚に入れています
本棚に追加
/17ページ

12

『喧嘩ってことは断ったってこと?俺が言うのもなんだけど、美和(みわ)はいいやつだぞ?本気で(さとし)くんのこと想ってるし、現に高校生の時はそんなこと一切言わなかったろ?』 「良い子悪い子の話じゃないんだ。俺は教師で佐野(さの)は元とはいえ教え子。そういう関係にはなれない」 『なんで?』 「なんでって……」 『(さとし)くんが真面目なのは知ってるけどさ。俺から見てて、(さとし)くんだって美和(みわ)のこと意識してたじゃん?』 「は?」 『他の女子に対する態度とちょっと違ってたけど。あれ無意識?』 有意識でたまるか。でも……。 思い返してみれば年齢を超えた会話がいつも楽しかった。こんな子がずっと側にいてくれたらなんて……思ったことが全くなかったわけじゃない。 『地学部棟の裏ってさ、前は古い建物があったけど更地にして、今は休憩スペースになってんだ。美和(みわ)のお気に入りの場所』 「そうなのか?」 『行ってやってよ。雪積もっちゃうから。で、今度4人でどっか遊びに行こうよ』 「……」 俺が黙っていると、電話はすぐに切られてしまった。同時にまた鼻頭に雪が当たって消えていく。 「雪の中の蝶か。……やっぱそうだよな」 俺は一人で頷くと、スマホで一つの番号を呼び出しつつ地面を蹴った。
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!