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広い芝生の休憩スペースは外灯が多めに設置されており、思ったより明るかった。光に照らされる雪の量が、さっきより多くなっている。 複数ある木製ベンチの一つには、膝を抱えてうずくまる人影があった。 「なにしてんだ。風邪ひくぞ」 佐野(さの)の前で片膝をついて顔をのぞくと、驚いたような顔がまた歪む。 「椎名(しいな)先生?どうしてここが……あ、(しょう)に連絡しました?」 「あっちから電話がきた。今度4人で遊びに行こうってよ」 俺が片手にしているスマホに気づいた佐野(さの)は、白い息を吐く。 「行けません。あの、私もう帰りますから」 力なく立ち上がろうとしてよろけた佐野(さの)の肩を慌てて掴む。美しい黒髪に白い雪がたくさんついてしまっているので、はらってやる。 「帰る前に蝶、見に行かないか?」 「え?いる場所がわかったんですか?」 真っ暗だった佐野(さの)の表情にわずかに朱色がさしたので、俺は安心させるように大きく頷いた。
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