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「翔くん?女性の下着を無遠慮に触るなんていけません」
「ごめんなさい」
「椎名先生も。翔くんを下着泥棒だと思うなんて失礼すぎです」
「いや、だってよ……」
キッチンと続きになっている小綺麗な部屋の真ん中で、宮野に説教をくらった翔と俺は小さくなっていた。やたら部屋が明るいのはベランダへ続く掃き出し窓が大きいからで、その窓越しに洗濯物を干す佐野の後ろ姿が小さく動いている。
「でも翔、だったらなんで風呂場にいたんだよ?」
「排水口が詰まったとか美和が言うから、さっきまで修理してたんだよ。でも水道捻ったらシャワー出てきて頭からかぶっちゃって」
「……すまん」
でかいくしゃみをした翔を、心配そうに宮野が見ている。このカップルの仲の良さは相変わらずらしく、俺はさっきの邪な考えを後悔した。そこでガラリと窓が開き、空っぽのかごを片手にした佐野が入ってくる。
「排水口直ってたよ。ありがとうね翔、服濡れちゃって本当ごめん」
「パーカー持ってたし大丈夫だって。一緒に干してくれて助かる」
ベランダを見てみるとタオル類に混じって男物のニットが干されていた。佐野は続いて俺へ向かって頭を下げてくる。
「椎名先生も、さっきはすみませんでした。つい……」
「いや、俺も悪かったよ」
気まずーい雰囲気。
でもそれを翔の盛大な腹の音が突き破る。
「もう昼じゃん。俺腹減ったよ」
「そうだよね。瑠璃ちゃんに色々習って料理作ってみたの。4人で食べよっか」
いつもの柔らかい雰囲気に戻ってキッチンへ入っていく佐野に俺は安堵する。
手土産のケーキと焼き菓子を渡してやると、やっと笑顔もみせてくれた。
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