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「そりゃ不思議じゃん!聡くんなら理科の先生なんだし、調べればなんかわかるかもよっ!」
「は?」
「そうだよな?生物の先生なんだし」
「地学の先生なんだが?」
「昆虫にも詳しいだろ?」
「聞けよ」
しかし佐野までが期待のまなざしを向けてきた。
「私もなんだか気になってきました。今も大学内にあの蝶たちがいるなら会いたいです。椎名先生、一緒に調べてもらえませんか?」
「あー……」
佐野本人に言われて考えが変わる。高校在学中、受験の時さえ佐野は愚痴や弱音を一切吐かなかったので心配になるくらいだった。そんな我慢強い元教え子からの、思い返せばこれは初めての「お願い」だ。
「佐野が言うなら……協力しないこともないが」
なぜか翔と宮野が、立ち上がって喜んでいた。
しかし。
翌週から暇を見つけては昆虫図鑑から蝶に特化した専門書まで漁ってみるも、やはり日本国内で冬季に元気に飛んでいる蝶なんて載ってなかった。
冬越えするやつもいるが、すべて蛹の状態でだったのだ。
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