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「おい高杉、ちょっといいか?」
聞きなれた声が俺を呼んだ。書類から目をはなして顔を上げると、予想通りの人物がデスクの横に立っていた。
「どうされました? 課長」
俺はなるべく丁寧に返したが、内心すこし苛立っていた。
あともう少しで定時上がりできそうだったのに……
「おまえ、情報課の安田ってやつ知ってるだろう。たしか同期じゃなかったか?」
安田が? あいつ何やらかしたんだ。
「辞めるんだってよ」
「……はい?」
突然の報告に頭がついていかない。俺の鈍い反応を見て、課長は大きな声で言った。
「だーかーら、あいつ辞めるんだって」
まぁしょうがないよな、と課長の声はフロア全体に大きく響いた。
「あいつ、めんどくさいところあっただろう? なんかこう、話し方とかもバカ丁寧でさ。正直お前も周りも、あいつのこと苦手って思ってたよなぁ」
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