タウンズビル八犬伝第九話 聖夜の舞姫

「トリビュート・トゥ・ラッキースター」

ラッキースターを知っているだろうか。
一時期、世界を夢中にさせた、多国籍国際的アイドルグループだ。男たちは彼女達の美しさや色香に魅了され、女たちは彼女達のようになりたいと神に願った。彼女達は美の象徴であり、女の憧れであり、人々を魔法にかける妖精だった。
妖精たちは画面の向こうで花のように笑い、小鳥のように歌い、蝶のように舞う。中心にいるのは姫であるラビットであり、それを四人の妖精が取り囲む形だ。
ファンの中では一番ラビットが人気だったが、それに次いでアルンが人気だった。どちらも少女のような可愛らしさがあったが、アルンが少し尖った雰囲気なのに対し、ラビットは女性的な柔らかさがあった。アルンのラップとラビットの歌声が人々を魅了した。
ファンはラビットかアルンかで言い争った。ファン同士はインターネットで言い争うだけでは飽き足らず、流血騒ぎも起こしている。
解散は突然だった。ツアーでラビットが泣き出した。
「私達、このツアーをもって、それぞれの道を歩みだします。ぐすっ」
「ラビット、泣かないで。私達はずっと心は一緒よ」
アルンがラビットを抱きしめる。
このツアーの興行収入は過去最高だった。