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部室でミーティングをしていたら、どこからともなく救急車のサイレンが聞こえてきた。
その音がどんどん近くなる。止まる。
どう考えても、部室の外に救急車がいる。
そうとしか思えない状況に、私を含めた二、三年生は、去年の出来事を思い出した。
あの時も、ふいに聞こえてきた救急車のサイレンが部室の外で止まった。
部屋にいた部員は全員ピンピンしている。なのにやってきた救急車。
いや、たまたまサイレンがこの付近で消えただけで、そもそもここに救急車なんて来ていないのかもしれない。
誰からともなくそう口にし、先輩の一人が事実を確かめるために扉を開けた。
みんなの予想通り、そこには救急車はいなかった。でも安堵する暇はない。だってその直後に、室内にいた先輩が突然倒れたから。
声をかけても目を覚まさず、その後、本当に救急車を呼んだことを今でもはっきりと覚えている。
先輩が倒れた原因は今も判らないし、その先輩は、命に別状はなかったそうだけれど、そのあと何週間も入院し、部活に現れるどころかろくに学校に来ることもなく、私達の前から姿を消した。
もしかしたら今、あの時と同じことが起きようとしているのかもしれない。
その際、倒れて、本当に救急車に乗るのは誰なのか。
上級生達の様子に、あの出来事を知らない一年生達にも緊張が走る。
この扉を開けたら、果たしてそこに救急車はいるのか。その後はどうなるのか。
不安だけれど確かめずにはいられず、一番出入り口から近くにいた私は、皆の気持ちを代弁するように、立ち上がって扉を開けた…。
誰が乗る? …完
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