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三ヶ月ほど前に拾った猫。
野良の割には懐っこく、警戒する素振りも特に見せずに家に居ついた。
でも、風呂に入れようとするととても嫌がり、一目散に逃げ出すんだ。
白猫だから、きちんと洗って毛並みを整えてやれば、今よりもっと可愛くなるだろう。
そう思い、猫好きの友達に頼んで、二人がかりで飼い猫を風呂に入れることにした。
もちろん嫌がり大暴れしたが、こちらも離さず、強引に猫に湯を浴びせ、洗った。
そうしたら、飼い猫はみるみる抵抗しなくなり、やがて、流れる泡と一緒に姿も消えた。
そういえば、あいつを拾ったのは、雨が雪に変わる寒い日だったっけ。
まさかと思うけれど、あいつは雪か氷の化身だったのか?
友達と二人、泡だけが残る風呂場に呆然と立ち尽くし、この三ヶ月を振り返る。
毎日毎日あいつと楽しく過ごした日々。
もし、もう一度巡り合えたら、今度は風呂になんか決して入れない。だから、できることなら再び俺の元に現れてくれ。
ぽろぽろと泣きながら、俺は、もういない猫の名前を呼んだ。
猫と風呂…完
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