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居酒屋いろは
駅前の飲み屋街の片隅に未だに昭和の匂いというか佇まいの小さな古い居酒屋が一軒。客はみな顔馴染みの中高年でこれまた昭和の香りのする冴えないサラリーマン連中ばかりである。店の手伝いもない駄目亭主が店の二階から頭を掻き掻き降りてきて煙草銭を持っていくような店である。手狭なカウンターだけの数席の店が満員になるようなことは万が一にもなかった。この先もないだろうと、いろは女将は思いながら店を開け葱やらを刻んでいると、ほらおいでなさった。
「よお、女将やってる?」
女将は包丁をバーンとまな板に置き
「やってません!うちは何十年もレスですから!ダメ亭主が糖尿病で勃ちゃしないんだもの!」
暖簾をくぐりかけた大村課長
「いや、店もうやってんのかい?ってこと」
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