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娘婿
「ところで女将んとこの娘さんの旦那は随分いい男らしいじゃねえか」
今夜も手酌の大村課長、例の得体の知れないモツ煮をつまみに一杯されておるわけです。
「あら、知ってるの?」
「どうやら取り引き先の営業マンらしいって噂だよ」
洗い物をしながら女将は静かに答えたんですな。
「あら、そう」
「たまには帰ってくるんだろ?娘さん」
キュッと音がするほど強く蛇口を閉めた女将。またまた大村課長の顔に鼻がつくほど顔を寄せ言いましたのは
「娘?あの子は来ないわよ、代わりにね」
いっときの間を置き大村課長の目を見つめ
「娘婿が二階で二回戦目を待ってるのよ、今夜は早くお店を閉めさせてくれないかしら?」
長財布を背広の内ポケットからそそくさと引っ張り出す大村課長でありました。
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