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冷たくなった
「よお」
暖簾をくぐると女将がいつもより上機嫌なことがひと目でわかった。客は大村課長ひとりだけ。カウンターに着くや否や女将は言った
「まとまったお金が入ったのよねえ」
おしぼりで手から顔からあちこち拭き拭き大村課長
「そりゃよかったじゃないか」
一体いくら入ったんだと聞くのも失礼、いや無粋と大村課長はそのひと言に留めたのである。
「旅行に行きたいわ」
「まあたまには旦那と夫婦水入らずで旅行もいいんじゃないの?」
般若が無理やりに笑顔を作ったようなある意味邪悪さを感じる微笑みで女将は大村課長の耳元でそっと囁いた。
「あらやだあの人ならいろんな意味で冷たくなっちゃったのよ、だから大金が入ったのんじゃないの」
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