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子供の頃から雨が好きだった。
雨が降っているのを、窓から見るのが好きだった。
学校に行きたくないとき、母は「たまには行きたくないときもあるよね」と軽く言って、何も聞かず休ませてくれた。
雨が降ると、決まって学校を休んだ。
別に、何があるってわけじゃない。
いじめられているわけじゃないけど、周囲にうまく溶け込むことが苦手だった。
雨みたいにサラッと落ちて、自然に地面を濡らすように、私もみんなの中に自然に溶け込みたかった。
私はレインドロップ症候群だ。
雨が降っていると、ずっと窓から外を眺めていた。
窓に付く雨粒が、水玉模様みたいに可愛いくて、それをいつまでも見ていたいと思った。
窓にへばり付いていると、ガラスがもやもやと曇って、それが自分の中のもやもやなのかわからなくなって、言いしれぬ不安に襲われた。
白いもやもやが次第に黒いもやもやになって、不安でたまらなくなった。
もやもやと葛藤しながら、それでも雨を眺め、音を聞くと落ち着いた。
ポトリポトリ、ザーザー、シトシト、ポツポツ、バタバタ…雨はいろんな音を鳴らした。
激しくて、怖い時もあったけど、静けさよりは一人じゃない気がして、雨が寄り添ってくれているようで安心できた。
私は、ポトリポトリと、少し大きめの雨粒が地面にゆっくりと落ちるのが好きだった。
薄灰色の地面が、だんだんと濃い灰色に染まってゆくのが、私の心の黒い部分を染めて消してくれるみたいな気がして好きだった。
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