拝啓、雪解け水へ

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 俺は何故かいつもみんなに嫌われていた。俺の風貌にも原因はあるのかもしれない。しかし、俺には好きな人がいた。雪子ちゃんだ。全身真っ白で、ここ雪の王国でもとりわけ美人だ。建物も食べ物も人の組成も物質としては雪の結晶でできてはいるが、はっきりと雪子ちゃんは個性を持っていた。  そんなある日俺は我慢ができなくなって彼女を力いっぱい抱きしめたんだ。すると彼女は溶けてなくなってしまった。  彼は文章を書くのをやめ、涙を拭った。しかし、涙はとめどなく溢れ、すぐに蒸発していく。何故なら彼は炎の王国からやってきた火の精霊だったからだ。
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