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「ねぇ、お母さん」
「・・・」
「お母さんっ」
「・・・」
「ねぇ、お母さんってばぁ」
ハッと気づくと娘の萌歌がカウンターを挟んだ向かいに来ていた。さっきまで、リビングのテーブルで宿題をやっていた筈。
「どうしたの、萌歌」
「もう、何回も呼んでるのに」
小学5年生の萌歌が、頬を膨らませている。
「あ、萌歌ごめんね。全集中して野菜切ってたから、呼ばれてるの気づかなかった。今夜は萌歌の好きなカレーライスよ」
「……全集中って、もう!」
「怒らないで」
萌歌が呆れた顔をしている。
幼い頃の萌歌はカレーが一番好きだったけど、今はそれほど喜ばないのが何か切ない。
「ねぇ、お母さん。今日の宿題なんだけど」
「……宿題?」
宿題と聞いて、ため息が出そうになるのを慌てて飲み込んだ。自分の小学生の頃と違って、今どきの小学生の勉強は難しいと密かに感じるからだ。
「宿題、わからない所があったらはお父さんに聞くか、塾の小松先生に質問してみなさいよ」
「お母さん違うの」
「え?」
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