雪だるまの案内人

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雪だるまの案内人

 そう、最初の記憶は7歳の頃。私はあまり良い子ではなかった。今でもどこか世界に反抗的かもしれない。  小学生になると今までと違って色々な制限がかかる。あれはダメ、これもダメ。自分で考えなさいというくせに大人の言うことを聞けという。遊ぶ時間も決められて、勉強もわからなければ遠回しに責められて、それが社会というものならなんてつまらないのかと思った。  暗くなるのが早いからと学校からは16時には家に帰らなければいけないと言われたのに、過保護な両親は15時半には家に帰れと言ってきたのが気に食わなかった。天気が悪くて薄暗いと放課後遊ぶことも許してくれなかった。反抗したところであっさり連れ戻されるのだけど。  「どうして、私だけそんなに早く帰らなきゃいけないの!?」  「暗くなる前に帰る。暗い時は危ないから」  「学校より早い!」  「学校より家のルールだ」  普段は学校の先生の言うことをよく聞きなさいと言うくせに、今度は家が優先なんて訳が分からない。ずいぶん、腹を立てていたことを今でも鮮明に思い出す。きっと、私は自分が納得できないことに従うのが昔から嫌いなのだ。  あの日、いつものように納得できずに怒って押し入れの中に閉じこもって、泣き疲れて眠ってしまった。気が付くと押し入れの外の両親と眠る部屋の電気は常夜灯の(ほの)かなオレンジ色になっていて、そっと音を立てずに押し入れの戸を開けると寝息を立てている両親の真ん中に自分の布団が敷いてあるのが見えた。  一緒に寝るには短い間だと思うからとわざわざ布団を3人で並べられる部屋を作ったエピソードは本当に愛してもらっていたのだと思うけど。  足音を忍ばせて、1階のトイレに降りた。思えばあまり怖がらない子どもでもあった。そして、気付いたのだ。いつもは真っ暗な窓の外が白く明るいことに。驚いた私は今の大きな窓のカーテンから顔を(のぞ)かせた。  「!」  外は天使の羽のようなふわふわの雪がたくさん舞い降りていて、空は赤味を帯びた白で明るかった。こんなの見たことがない。ぼうぜんと立ち尽くしていたが、ふと気付いたのだ。暗い時は危ないから遊んじゃダメなら、明るい今は遊んでもいいはずと。
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