雪の日の思い出

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 ――あれは、雪が積もっている日だった。  雪が止んで外に出ると、京都ではめったに見ない光景が広がっていた。  積もっても数ミリ程度で雪だるまを作っても数分で溶けてしまうぐらいしか積もらない場所で、何と数センチも積もっていたのだ。目視で足首まで沈んでしまうだろう積もりっぷりにテンションが上がり、是非長靴で踏みしめたいと心が高揚したのを覚えている。  しかし残念なことに、居る場所は学校で、履物はローファーしかない。  他の人も同じくだったのか、車で迎えに来てもらっている人が殆どだった。私も母に連絡してみたが、さすがに慣れていない雪道を走るのが怖いとのことで、その気持ちは大いに共感できた私は仕方なくそのまま帰り道を進んだ。が、やはりローファーではきつかったらしく足のあまりの冷たさに耐えれなくなり、丁度帰り道の中間あたりにある大型スーパーへ駆け込んだ。自動ドアが開いた瞬間、温かい空気が全身を優しく包む。その居心地のよさにホッとした私は、すぐに階段を上がって、冷たい空気が入らなさそうなソファを探した。  靴と靴下が濡れてしまって気持ち悪く、早く脱ぎたかった。  その時に、今日は厄日だと盛大なため息をついた。  歩くたびにガボ、ガボと聞いたことのない音がローファーから聞こえていて、足だけ木こりの男みたいなぶっとい足になってる気分だった。新しい靴下を買うついでに長くつも買おうと考え、とりあえず気持ち悪いからひざ丈まである長い靴下を脱いでしまおうと適当なソファを見つければすぐに座り、片方を脱ぎ始めた時だった。 「ひゅーっ」  囃し立てるような、不穏なものを纏った口笛がどこからか鳴った。  これは気にしてはいけない、きっと私は無関係、と嫌な予感がしつつも顔を上げずに片方脱ぎきったが、さすがに、脱ぎ終わってから「わお、生足」と言われればそのままもう片方も脱ぐ勇気はなかった。つい顔を上げてしまった私は、顔を上げてしまったことも後悔した。  数メートル離れた前方に、見知らぬ制服を着た男子が3人居た。  同い年か、年下か、なんてわからないけど、ただ、3人とも自分より背が高いだろうことはわかって私はぞわりと背筋が泡立つのを感じた。そして、3人の視線の先に気づいてハッと足を下げる。  そうだ、私はスカートなんだ。
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