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電車をいくつか乗り換えて着いたターミナル駅が待ち合わせ場所だった。
待ち合わせ時間までまだ少しあるけれど、あたしの足は待ち合わせ場所へと向かっていた。
大也はあたしを待たせたりしたくない人だから、きっと早めに付いているはず。
ざわざわとした人の多い構内を歩いてきょろ、とあたりを見渡す。――そして、見つけた。
「大也!」
あたしの声に大也が顔を上げた。最後に会った時よりもうんと背が伸びている。髪型も以前とは違っていてどこか大人びていて、大也なのに違う人みたいに見える。
「優奈」
だけどあたしを呼ぶ声はあの頃と同じ。少しはにかんだ表情で小さく手を振ってくれる。
あたしは大也に駈け寄って――彼のお腹めがけて勢いよく、どすっと体当たりをした。
「ぐっ」
大也が低く呻いた。だけどそんなの構ってられない。
「大也のばか!」
「えぇっ?」
「まどろっこしいことすんな!」
あたしが握りしめている紙に気付いて、大也は「あぁ、これ」と照れて頭をかく。
「ロマンチックかなと思ったんだけど」
「まどろっこしい! 度胸がない!」
三年もかけて告白してくるなんて。
「雪なら溶かしちゃえば邪魔にもならないかなと思ったんだけど」
「溶かせるわけ、ないじゃん」
やっと本人に言えた。
「大也がくれたもの、簡単に溶かしたり壊したりできるわけ、ない。危うく気づかないところだったんだから」
いつのまにか体当たりだった体勢はハグになっている。あたしは大也にしがみつき、大也はあたしを抱きとめている。道行く人たちが気に止めもしない、背景に馴染んでしまいそうなカップルのよう。
「どうして、溶かせないんだ?」
「大切だからに決まってる!」
腹が立って、だけどなぜか涙が出てきて、あたしは顔を大也の胸にこすりつけて涙を拭いた。
「鼻水つけてやりたい」
「それは勘弁して」
ぐす、と鼻を鳴らす。
「あたしがどれだけ……どれだけ想ってたと」
ぐしゃぐしゃになった顔を上げる。
「あたしも、好き。大也のこと、大好きだよ」
はじめて見る大人のようだった大也の顏。その顔が、あたしの告白に真っ赤に染まる。
もしも今雪が降ったとしても、きっと寒くはない。
一面に広がる雪さえ溶かしてしまいそうな熱を持った腕が背中にまわり、あたしを強く抱きしめた。
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