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少しだけ都会に馴染んできた次の年にも、大也は律儀に雪だるまを送って来た。今度の子はマフラーを巻いてる。
手紙には『今年のも、溶かして』の一文。あたしはもちろん溶かさなかった。去年からずっと冷凍庫に入れたままの雪だるまのとなりに、今年の子を並べてあげる。
冷凍庫を圧迫するのはやめてちょうだい、とお母さんは言ったけれど、もともとはあまり料理の得意な人ではないから逆に食材を入れずに済む口実ができて安堵しているようでもあった。
もう苦労して無理に作らなくてもいいよ、と同じく自炊の苦手なあたしは言った。
お母さんは形だけ叱ってきたけど、あの雪だるまがあたしにとって大切なものだと気づいているから、勝手に捨ててしまうようなことはしなかった。
狭い冷凍庫の中で二体の雪だるまが肩を寄せ合って並んでいる。
「来年も送ってくれるのかしら」
あの雪景色が懐かしいのか、お母さんも白いばかりの雪だるまのお腹を見つけてそう呟いた。
(来年……)
大也はこちらの大学を受験すると言っていた。そうして合格したら、またあの頃と同じように一緒にいられるだろうか。
(あの頃と同じ関係性のまま……?)
家族のように、兄弟のように、当たり前にそばにいる存在。
そうしてまた、同じように時を過ごすのだろうか。
あたしが抱いている感情は、そんな関係じゃ満足できないというのに。
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