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オレンジ色に熟れた太陽が、霧雨に濡れながらゆっくりと海で編まれたフルーツバスケットに置かれる。
茜色の世界で蝶が優雅にワルツを踊り、海辺に佇む人魚の唄声が風に乗る。
蝶のドレスの裾がフワリと広がると、茜色が海に反射して人魚の鱗と共にキラキラと輝いた。
夜の帳が下りると、ハマナスの花びらに付いた雨粒が蜘蛛の糸で出来たレースを濡らす。
空では星たちが今宵も噂話に盛り上がり、満月がそっと微笑む。
寄せては返す波音を聴きながら極彩色の瞳を煌めかせ、ユキヤナギの花を咥えたセイレーンが静かに飛行する。
ブラックオパールのような極彩色の瞳から一筋の涙が広い海に落ちると、波にもまれ、やがてそれが小さな宝石に姿を変える。
しばらくして冷たく暗い海を流れているとどこからともなく、1匹の白鯨が姿を現し、まるでアルバムをめくる様に波打ち際へと忘れ去られてしまった誰かの宝石を運ぶ。
真珠にアクアマリンといった様々な姿形の宝石達が、洗いたての朝日の中でまるで、万華鏡のように光を反射して今日も輝く。
遠くの方で、微かに白鯨の唄声が聴こえた気がした。
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