過去 2

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過去 2

高校時代お互い視線で追うだけの関係で、いきなり大学進学で遠距離になってもうまくいくわけはなかった。電話で話すだけで一度もお互いの下宿の行き来もないまま、些細な流れから冒頭の言い合いになって、そしてわたし達は終わった。 わたしも彼も意地を張っていたのかもしれない。まともにつきあってもないのにいきなり遠距離でうまく付き合えるはずもないという投げやりな気持ちもあって、言ったことを取り消すことも言い直すこともしないまま、関係はそれからぷっつり切れた。わたしは必死で彼を心の中から追い出そうとした。思い出さないように、心から彼を消し去った。それがわたしの心を守るためだった。新しい生活は慌ただしく刺激的で、いつの間にか彼のことは思い出さなくなっていった。 でも、わたしは結局その後、誰にも恋はしなかった。自分を好きになってくれた人を好きになって、その人と結婚し子どもを持ち、平穏な人生を歩み、子ども達は親の手を離れ自分の道を歩みだしている。 彼からショートメールが来たのはそんな時だった。
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