3年目

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3年目

わたしは彼を改札まで見送る。キャリーバッグをひいた彼と改札の手前で別れを告げ、そして帰る。 何度も振り向きたくなる。彼の背中が見たくてたまらない。その欲求を今年も必死で堪え、やや足早にその場を立ち去る。未練たらしいことはしたくない、心が未練でいっぱいだから、だから余計にそれをしたくない。いつもこの時鼻の先がツンとして子供みたいに泣き出したい気持ちになっている。早く1人になりたい、そればかり思いながら雑踏を急ぐ。 今年も連絡が来て、元気な顔を見ることができた。これ以上望むべきじゃない。彼も駅で短い時間お茶をする以上のことを何も言い出さない。でも、高校生のあの頃、毎日見ていた、ずっと好きだった人が会わないかと声をかけてくれて、結局毎年こうやって2人で会えているなんて、奇跡過ぎる。最初に感じた苛立ちの意味がようやくわかる。あれは、あんな颯爽として変わらない姿を見たら、簡単にまた好きになってしまうじゃないか、どうしてくれるのっていう感情だった。 これだけ時間がたったのに、あっさりとわたしはまた彼に惹かれてしまっている。そしてそれを伝える気はやはりないままだった。
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