あの雪の日の友達

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 家の近所の公園につくと、わたしは「わあ……」と歓声を漏らした。それほどまでに、見慣れたはずの公園が白銀の世界に染まっていたから。光に照らされた雪が、宝石を散りばめたみたいにキラキラと輝いている。  すべり台とブランコ、砂場、それから、危ないからとぶら下がる棒が外されて無惨な姿になった鉄棒だった棒があるだけのこじんまりとした公園。小さな頃は遊んだ記憶もあるけど、今では子どもたちが遊んでいるのを、学校の帰りなんかに外から眺めるくらいだ。  そんな公園に、久しぶりに足を踏み入れる。通学路の途中にあるからほとんど毎日見ているせいか、それとも雪のせいで全く違う景色になっているからか、感傷的な気分には浸れない。  遊具は雪に埋もれていて冷たいし、滑ると危ないので触らず、友達と二人で子供みたいに駆け回った。ただ走り回っているだけなのに、楽しかった。  雪の上を走り回るだけなのも飽きてきて、いつしか、どちらともなく雪を丸めて、相手にぶつけだした。ふわふわの雪の感触を楽しみつつ、ぶつかっても痛くない程度に丸めて投げる。  雪合戦。世界大会が行われるくらいなので、正式なルールがあるらしいけど、雪に馴染みのないわたしが知るはずもなく、ただ雪玉を投げ合うだけ。それでも、こんなに楽しいならずっと雪が降り続けばいいのに、と思ってしまうくらいにははしゃいでいた。  二人で笑い合いながら、雪玉を投げて、ぶつけられて、避けて、体が温まって汗が出てきて、たまに転んで。ビショビショになるけど雪がクッショになってくれるおかげで痛くなくて、高校生にもなって転ぶ間抜けな姿にまた二人で笑った。  そうしていると、不意に奇妙な感覚に襲われた。  友達の姿に誰かが重なるような、既視感。デジャブみたいな。 『ほら行くよー。カズサちゃん』  女の子がこちらに向かって雪玉を投げてくる。 『うん。いいよー。コユキちゃん』  今よりも小さな、たぶん小学生くらいのわたしが答える。  これは、夢の光景? それとも、過去の思い出?  雪玉が飛んでくる。避けることもせず、ボスリとわたしの頭にぶつかって崩れた。  そうだ、今まで忘れていたけど、わたしは以前もこうやって友達と雪玉を投げあったことがある。 「どうしたの?」  急に雪玉を投げ返してこなくなったわたしを不思議に思ったのか、サキが駆け寄ってきた。 「ねえ、コユキちゃんって覚えてる?」 「何の話?」
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