ある意味、お宝の山

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ある意味、お宝の山

 オレたちは、お宝が眠っているというダンジョンに潜入した。 「異世界から来た魔術師のいるダンジョンを、とうとう見つけたわ。ここには、世にも珍しいお宝が眠っているというわ!」  相棒の魔法使い・フィナが、入り口の段階で興奮している。 「オレには、別の意味でお宝って感じがするんだけどな」  入口に飾ってある物質の段階で、「ああ、ここはオレ向けだわ」と思ったのだ。 「どういうこと、タクロー? たしかに異世界転生者であるあなたに、直に依頼が来たってのは気になるけど」 「お前の思っているお宝は、眠っていないと思うぞ」   「そんなはずはないわ、タクロー! だって、見なさいよ! 入口に飾ってあるこのヨロイ! 見たこともないデザインなのよ!」  地球からの転生者たるオレだからこそ、わかる。  これはどう見ても、アニメに出てくるロボのフォルムなんだよなあ。 「この時点で、ただものではないって感じがするわ!」 「おう。これ、ダンプラだもんな」  どう考えても、二〇分の一スケールの「機動兵団 ダンケルク」のロボがモデルに違いない。    しかもこれ、ザコロボットじゃん。  シリーズ通してのザコキャラだ。  だけど汎用性が高くて、ベテランが乗ると機動性が鬼る。  専用機にカスタムされているタイプとか、主人公の後継機でさえ苦戦するんだよなあ。  あれは、かっこよかった。  だが、ザコ兵士ロボのまま飾ってるってことは、コイツはわかっている。  ここにいる魔術師は、かなりのマニアだ。わかっているマニアである。   「タクロー。あなたはたしか、転生者だと言ったわよね? それとこのアイテム群は、関係があるの?」 「大アリだ! これはかなり昔……オレがいた頃の昔だが、ちびっこたちが夢中になった物語に出てくるヨロイだ。本当なら巨人のようにデカくて、人が乗り込むタイプなんだよ」 「そうなのね。こんな小さいヨロイを巨人が身につけていたなんて、想像すらできないけど」 「まあ、オレの意見なんてスルーしてくれ」  どんどん、先へ進む。 「うわー。こいついい趣味してんなー」  窓壁には怪獣のフィギュアが大量に敷き詰められていた。  これだけの数を、ダンジョンのヌシはどうやって持ち込んだんだろう?  そもそも、どうやって異世界に持ってきたのだ?  スライムに、窓を吹かせているではないか。 「タクロー。スライムが出たわ! やっつけましょうか?」 「よせ! 中のお宝が焼けちまう!」  杖を構えたフィナを、オレはどうにか押さえる。   「これがお宝だっていうの? モンスターの像じゃないの。きっとこの像を使って、街を襲うつもりよね? 魂を吹き込むか、なにかをして」 「だよなあ」  コイツラ異世界人には、この像の数々が「魔法使いの尖兵」に見えるらしい。  なるほど。  異世界から来た魔術師が、ダンジョンに逃げ込んだのがよくわかるぜ。  文化を理解されないのは、つらいよな。
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