0人が本棚に入れています
本棚に追加
/1ページ
ある意味、お宝の山
オレたちは、お宝が眠っているというダンジョンに潜入した。
「異世界から来た魔術師のいるダンジョンを、とうとう見つけたわ。ここには、世にも珍しいお宝が眠っているというわ!」
相棒の魔法使い・フィナが、入り口の段階で興奮している。
「オレには、別の意味でお宝って感じがするんだけどな」
入口に飾ってある物質の段階で、「ああ、ここはオレ向けだわ」と思ったのだ。
「どういうこと、タクロー? たしかに異世界転生者であるあなたに、直に依頼が来たってのは気になるけど」
「お前の思っているお宝は、眠っていないと思うぞ」
「そんなはずはないわ、タクロー! だって、見なさいよ! 入口に飾ってあるこのヨロイ! 見たこともないデザインなのよ!」
地球からの転生者たるオレだからこそ、わかる。
これはどう見ても、アニメに出てくるロボのフォルムなんだよなあ。
「この時点で、ただものではないって感じがするわ!」
「おう。これ、ダンプラだもんな」
どう考えても、二〇分の一スケールの「機動兵団 ダンケルク」のロボがモデルに違いない。
しかもこれ、ザコロボットじゃん。
シリーズ通してのザコキャラだ。
だけど汎用性が高くて、ベテランが乗ると機動性が鬼る。
専用機にカスタムされているタイプとか、主人公の後継機でさえ苦戦するんだよなあ。
あれは、かっこよかった。
だが、ザコ兵士ロボのまま飾ってるってことは、コイツはわかっている。
ここにいる魔術師は、かなりのマニアだ。わかっているマニアである。
「タクロー。あなたはたしか、転生者だと言ったわよね? それとこのアイテム群は、関係があるの?」
「大アリだ! これはかなり昔……オレがいた頃の昔だが、ちびっこたちが夢中になった物語に出てくるヨロイだ。本当なら巨人のようにデカくて、人が乗り込むタイプなんだよ」
「そうなのね。こんな小さいヨロイを巨人が身につけていたなんて、想像すらできないけど」
「まあ、オレの意見なんてスルーしてくれ」
どんどん、先へ進む。
「うわー。こいついい趣味してんなー」
窓壁には怪獣のフィギュアが大量に敷き詰められていた。
これだけの数を、ダンジョンのヌシはどうやって持ち込んだんだろう?
そもそも、どうやって異世界に持ってきたのだ?
スライムに、窓を吹かせているではないか。
「タクロー。スライムが出たわ! やっつけましょうか?」
「よせ! 中のお宝が焼けちまう!」
杖を構えたフィナを、オレはどうにか押さえる。
「これがお宝だっていうの? モンスターの像じゃないの。きっとこの像を使って、街を襲うつもりよね? 魂を吹き込むか、なにかをして」
「だよなあ」
コイツラ異世界人には、この像の数々が「魔法使いの尖兵」に見えるらしい。
なるほど。
異世界から来た魔術師が、ダンジョンに逃げ込んだのがよくわかるぜ。
文化を理解されないのは、つらいよな。
最初のコメントを投稿しよう!