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「あ! あのコートの大男見ろ! イエティの着ぐるみか? しっかしよくできてんなあ……」
「もしかして雪まつりの新しいマスコットキャラ? それにしてはちょっとイカついわねえ……」
また、その騒ぎの中心にいる雪男へも、当然、周囲の人々の眼は注がれる……幸い着ぐるみだと勘違いされているようではあるが、さすがにコートと帽子だけでは変装に無理があったみたいだ。
「マズイ。少々やりすぎた……これ以上、注目を集める前に早く撤退せねば……」
冷静を取り戻した雪男は、倒れた雪ん子のもとへと急いで駆け寄る。
「雪ん子、大丈夫か? どこか怪我はしていないか?」
「うん。ちょっと痛かったけど、雪ん子強い子。ぜんぜんだいじょぶ」
彼女を抱き起こし、優しく雪男が声をかけると、涙目になりながらもどうやら怪我はしていないらしい。
「よし! 楽しんでいるところ悪いが、見世物小屋や生物研究所行きになりたくなかったら早くここを離れるぞ! こんな人の大勢いる所で迂闊にも目立ってしまった」
「見世物小屋!? 雪ん子、捕まって珍獣になりたくない!」
自分の足で立たせ、汚れた着物をぱんぱん叩きながら雪男が説得すると、ぐずると思いきや雪ん子も、その脅しを聞いて素直に納得してくれたみたいである。
「雪女さん! 俺としたことが騒ぎを起こしてしまった。申し訳ないがあなたも早く! 人が集まってくる前にここから立ち去らないと!」
「…え? あ、はい! わたしもちょっとやらかしてしまいましたから……それでは急用ができましたのでわたしはこれで。風邪ひかないようにしてくださいね!」
続いて雪女のもとへも素早く向かい、端的に事情を説明する雪男に対して、こちらもこちらでそれどころじゃなかった雪女も、すぐに賛同して浮気男達に別れを告げる。
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