友情

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 最近、“雪だるま”というアイドルグループが活躍中だ。その中に山手線の駅名と同じメンバーがいる。ドラマにも出ていて人気者だ。私はメディアで彼の名前や顔立ちを目にすると、あの冬を思い出す。    目黒(こう)と私は中学校で同級生だった。彼は地場の工務店の息子。当時は珍しかったコンクリート造りの三階建てに住んでいた。その顔立ちは彫りが深く、物越しが柔らかいばかりか身体自体も柔らかい。体操部だった目黒はバク天や宙返りを軽々こなした。当然、女子には人気の的だった。私の親も言っていた。 「煌君はハンサムね」 「目黒君は男前だな」  とは言え私と目黒は特別仲良かったわけでもない。クラスも違った。だが、中学の間、登校だけは二人一緒だった。理由は単純。二人の家は学区内で最も遠かった。入学時、心配した親たちが相談し一緒に通わせたのだ。目黒は律儀に私を毎日迎えに来たが、今では何を話したかぜんぜん覚えていない。中学を卒業すると目黒は大学の名前が枕詞の付属高校に進学した。
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