友情

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 バスがスキー場に着いた。簡単な朝食を取った後、経験者は早速ゲレンデに散って行く。私たち4人はインストラクターについてリフト乗り場脇の緩やかな斜面に集合だ。午前中は板のつけ方や外し方を始め、ストックの使い方、転び方、エッジを効かせた斜面のカニ歩き、八の字登り、ボーゲンなど初心者の基礎を学んでいった。  デーブの動きは予想外に軽やかだった。角田さんは動きが硬くぎこちない。丸井さんはよく転がった。私は、極めて引いた腰に対して「腰!腰!」としばしば苦言をいただいた。  昼食後、気持ちに余裕が芽生えた私たちは、初心者コースに挑む決意を固めていた。私たちが勇んでリフト乗り場に集まると、さっきまでと打って変わって雲行きが怪しくなってきた。しかし、私たちの高揚感はわき目もふらせず私たちをリフトにいざなった。案の定、リフト上では小雪がちらつき、ゲレンデに立った時には吹雪に近かった。曇ったゴーグルが視界を妨げ、横殴りの冷たい雪が頬を打つ。4人は無言で固まった。 「見えないな...」角田さんが口火を切った。 「そうだね...」デーブがすかさず合意した。 「こわい...」丸井さんがつぶやいた。 「どうしよう?」再び角田さんの登場だ。 「どうする?」デーブが質問に質問で応じた。 「こわい」丸井さんがもう一度つぶやいた。  視界が悪いにもかかわらず三人のゴーグルが私を同時に注視した。私はしばし沈思する。そして、おもむろに振り返りストックを掲げてある方向を指していた。    5分後、私たちは再び、リフトの人だった。
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