約束

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約束

「今日、ここで会った事は絶対に秘密ね?誰にも話さないでね」  そうクラスメイトの園田さんが言い、唇に人差し指をあてた。 「どういう意味だ?」と俺は聞いた。  ここは秘密の場所でも何でも無く、ショッピングモールのペットショップだ。俺の目の前のガラスケースでは子猫が丸くなって眠っていた。それに俺と園田さんはたった今、偶然出会っただけだ。共有する事は何も無い。何を秘密にすると言うのだろう。俺はその事を告げた。 「う〜ん、だから、私たちがここで出会った事、絶対に秘密にして欲しいの」と園田さんはぐいっと近づき、俺の顔を覗き込んで言った。「お願いできるよね?」 「お、おう、いいけど」と俺は返した。もう少しで触れてしまいそうな程、彼女の顔が近い。思わず、一歩、退がってしまう。 「けど?」と強い調子で園田さんは言い、一歩、俺に近づく。再び触れんばかりにまで顔が近づく。彼女の長い髪が揺れ、柔らかい香りがした。 「分かった。誰にも言わない」と俺は言い、何度も頷いた。 「よし!じゃあね!秘密を守ってくれたら、タカラモノが手に入るかもね」と園田さんは言い、満面の笑みを浮かべ、足早に去って行った。去り際、彼女は振り返り、「絶対だぞ〜!」と言い、大きく手を振った。  
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