走る

1/2
前へ
/18ページ
次へ

走る

 間に合うのか、間に合わないのかは分からない。ここで走らなかったら、絶対に後悔する。色々な考えが俺を弱気にさせた。でも、俺の足は止まらなかった。目の前に小さな背中が見えた。一瞬、俺は怯んだ。でも。もう、決めた。 「園田さん!」と俺は出せる限りの大声を出した。  園田さんは身体を震わせ、立ち止まった。 「園田さん」と俺はもう一度、名を呼んだ。 「なによ」と園田さんは背を向けたまま、低く呟いた。「私の事なんかどうでもいいくせに。なんとも思ってないくせに。興味なんかないくせに。追いかけてなんか来ないでよ」  俺は何を言えばいいのかなんて分からなかった。でも俺にはこの子が必要なんだと強く思った。  俺は園田さんの両肩に手を置いた。強く掴んだら壊れてしまいそうな程、華奢だった。 「……なによ。あんな別れ方したから、気まずいだけでしょ」と園田さんと言った。声に涙が混じっていた。「もう、触らないで!」 「好きだ」と俺は言った。それ以外の言葉は浮かばなかった。  
/18ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加