走る

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「何よそれ?同情かなにかなの?」と園田さんは言った。 「違う」と俺は言った。俺の中では園田さんとの過ごした記憶や大きくなった想いが暴れて、出口を求めていた。けど言葉にできなかった。  だから。  俺は園田さんの肩を引き寄せて抱きしめた。 小さな身体は冷え切っていた。俺の熱が園田さんに伝わればいい、そんな事を考えながら抱きしめ続けた。  いつしか固く強張っていた身体から少しずつ力が抜けていき、温かさが感じられるようになった。 「好きだ」と俺はもう一度、口にした。 「どうしてこんなにあったかいの?……やっぱり無理。どうしても嫌いになれない」と園田さんは囁き、俺の腕に触れた。「……私も……なんだよ」    強い風が俺たちに吹きつけた。でも、まるで寒さなんか感じなかった。  
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