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蘇る記憶
ー20年前。
「ごめんなさい!ごめんなさい!」
5歳の私は、頭を抱えて泣いていた。
「なっちゃんもあーちゃんもハンカチでお砂包んで運んでたから、良いと思ったんです。嘘をついていたわけでもなくて、隠していたわけでもなかったんです。ごめんなさい。」
母親は許さなかった。
私が泣いた事も、砂遊びでハンカチで砂を包んで運んで遊んだことも、自分からそれを言わず、友達に教えられたことも。
何度も拳を振り上げ、何度も殴った。
顔に拳が当たり、後ろに倒れ、壁に思いきり頭を打ちつけた。
気がつくと、そこはソファの上だった。
痛む顔には、保冷剤が当てられている。目を覚ました娘に、母親は言った。
「ごめんね、叩くなんてひどいママだよね。ママは悪い事をしたから、これからお巡りさんに逮捕してもらうね。さようなら。」
私は泣いた。母親ともう二度と会えなかなるなんて、自分のせいで母親が捕まるなんて、そんなの嫌だ。
「私が悪いことをしたから。ごめんなさい。ママは悪くない。」
「じゃあ、貴方がおまわりさんのところに行って。」
「え?」
「貴方が悪いから、貴方が捕まるんでしょ?さようなら。」
「やだ、やだ、ごめんなさい!」
「行かないの?じゃあ、私が捕まるから、警察行くね。さようなら。」
「ごめんなさい。それは嫌です!」
何分、何十分、このやりとりは続いたのだろうか。どうやって終わったのかも、もう誰も覚えていない。
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