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〜綴〜
抱きしめてしまいたい衝動は封印。
動けなくなる俺に、行くだろ?と促すのはおまえの役割。他の誰でもない。そう、ずーっと井波に委ねてる。
俺はタバコを一本吸うと、井波の家を出た。
「何しに来たんだよ」なんて笑いながら見送りは断り、車に乗りこんだ。
雨はすっかり上がり、空にはちらほらと星が見えた。
帰って歌詞を書こう。
アイツを想って…想って…想って。
♪
月冴ゆる音に君を求めても
声冴ゆる夢に愛はないままで
Ah この血潮に君が流れるのを知っている
A h メリーゴーランド 廻れば溶ける愛
ほのめかす 幻想の恋物語
♪
自宅のベッドで大学ノートを顔に被る。
井波を想って書く詞は、時に自分の首を絞め、跳ね返り現象が起こる。
想いを再認識するのは、意外と辛かったりするようで、俺はその欲望を纏わりついてくる女で誤魔化した。
もうすぐ、暑い夏。
ムッとする空気に混ざって、月が昇る。
井波と東京へ出て、NOT-FOUNDは走り出す。
窓際に立ち、タバコに火をつけると煙を吐き出した。
「あぁ〜…セックスしてぇ…」
独り言に思わず吹き出す。
「誰とだよ……」
目を伏せたら、瞼の裏で、井波が俺を
手招いた。
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